真夏の4大特番!デザイン制作の裏側
2024年8月中旬に「夏のよんチャンバラエティー祭り」と銘打って4つの特別番組が放送されました。実はその4つの番組全て、MBS企画オンエアグラフィックチームでデザイン制作を行いました!それぞれ番組の内容やコンセプトもバラバラ。4人のデザイナーが中心となり個性あふれる番組デザインを作りあげたので、今回はその裏側をお届けします。
①「パラれるテレビ 」
「出演者」も「番組内容」も全て「架空」を追及!フィクションであるからこそ自由で不可思議な事件が巻き起こる…次世代型モキュメントバラエティー番組です。4つの特番の中で唯一深夜枠で放送された、挑戦的な内容の番組でもあります。担当デザイナーに話を聞きました。
タイトルロゴデザインのコンセプトは?
「アンチTV平成レトロハイパーポップ」です。この番組の演出担当(ディレクター)は多くを語らずなタイプの方で即興でラップをかますフリースタイルラッパーかのごとく与えらえたお題を頼りに、手探りでデザインを作成していくのが恒例になっています。今回も発注の際はひと言、「ハイパーポップで!」
さて困ったと、初めて聞いた「ハイパーポップ」なるワードをネットで検索。デザインの主流がメンフィスの流れをくんだ80’S的なものから、初期インターネット・初期CGゲームのテイスト取り入れた、90’S・平成テイストに移り変わる黎明期なのだと実感!
GIFアニメ風の「わんドッグ」なるキャラを作成し、ガラケーや顔文字を入れて平成レトロ感を演出。ベタベタなCG風の効果でオリジナルのハイパーポップデザインを完成させました。
今回担当した番組の作業で面白かった事、苦労した事は?
「ありもしないVTR」を「いもしない芸能人」が見るという難解な番組。VTRの編集中も「くくらば!」「ディーシア!」等、ウソの単語が飛び交う楽しくも難しい不思議な空間でした。
▼実際に放送された全て架空の摩訶不思議なテロップ
さらにもうひとつ大変だった事は、番組の告知用に「架空の番組ロゴ」を8点作成してほしいとの無茶な発注が…。(その内のひとつ「火曜に仰天!世のリアルーツ」は実際にオンエアされ、オンエアがスタート)
一人ではどうしようもなく、オンエアグラフィックチームのメンバーに協力してもらい8つの番組ロゴが完成しました。作成したロゴは、Xの告知で使用され、1つが公開された数日後には「番組内容が変更になりました」と新しい番組が告知されるという、高度な(?)宣伝方法で、一部界隈をザワつかせていました(笑)
▼告知で使用された架空の番組ロゴたち
②「酒が抜けたあと…」
「難波で終電を逃したお姉さん」、「新世界の路上で酒を飲むおじさんおばさん」など、関西の街で出会った”酔っ払い”の方の「酒が抜けたあと」に密着するとそこには意外な姿が!?酒飲みの数だけドラマがある。人生のぞき見ドキュメント番組です。こちらも担当デザイナーに話を聞きました。
タイトルロゴデザインのコンセプトは?
実は、演出担当(ディレクター)の要望は特にありませんでした(笑)「お酒が入っていてほしい」という最小限のオーダーのみを盛り込み、今回は自分のやりたいようにデザインさせていただきました。酒が抜ける「前」と「後」を表現したくて「昼」と「夜」をイメージし、青と黄色のツートーンカラーを使用しました。
また、自分自身もお酒を飲むのが大好きなので、自分のテンションを上げるためにもできるだけ色んな種類のお酒を配置しました(笑)あとは、番組のタイトルをキャッチーなものにしたいという思いから「SAKENUKE」という親しみやすいようなワードを作ってデザインに取り入れることを演出担当に提案しました。そこから、「SAKENUKE」や「酒」「抜」といったワードをテロップデザインにもふんだんに盛り込みました。
▼実際のテロップデザイン
今回担当した番組の作業で苦労した事は?
苦労した事のひとつに、スケジュール的にロゴデザインを作成するよりも前に、スタジオ出演者の方が見るVTRを編集するのが先だったので、番組のイメージとなるロゴが無い状態でテロップデザインを作成した事です。
なんとなく色数は抑えようという考えがありました。自分なりに番組から連想するワードを出していき「お酒」「ゆるい雰囲気」「ビールの泡」「酒が抜ける前・後」などから青と黄色をメインに使用して、ゆるい雰囲気で文字は丸めのフォントを多く取り入れました。その後、テロップに合わせてロゴの方向性も決めていきました。普段とは進め方が逆なので少し苦労しました。
▼酒飲みさんの紹介画面のデザイン(背景の泡が編集で動いて良い感じに)
今回担当した番組の作業で面白かった事は?
登場される酒飲みの皆さんの、取材時の裏話を聞きながら編集作業をするのは楽しかったです。陽気な方々を見ているだけで私も飲みに行きたくなったりもしました。酒飲みにもそれぞれドラマがあるんだなぁと思った番組です。あとは、ネームテロップのデザインを作っている時が楽しく作業できました。
▼文字から作字したネームテロップのデザイン
③「下っ端春日 」
オードリー・春日さんが実際にある番組のADとなり、街録の許可取り、バミリ作り、素材のデータ化、追撮、編集の立ち合い…など、番組作りに本気で携わる!テレビ局の裏側も見る事ができるお仕事バラエティー番組です。こちらも担当デザイナーに話を聞きました。
タイトルロゴデザインのコンセプトは?
オードリー春日さんが「下っ端」として番組制作に携わるというのがこの番組のコンセプトです。春日さんのイメージと「下っ端」という単語がもつ軽さをうまく組み合わせることを意識しました。
この番組における「下っ端」とはADさんのことを指します。では「ADらしさ」や「下っ端感」を表現するのに最適なデザインやモチーフは何か?カンペ?大荷物?いろいろ検討した結果、最終的には「バミリ」「養生テープ」「社員証」が主要な要素になりました。「バミリ」とは、演者の立ち位置などをマーキングしておく印のことです。
通常、テレビ収録ではカメラリハーサルで立ち位置を細かく決めるのですが、目印がないと本番も同じ場所に立つのは大変です。そこで目印を「バミって」おきます。
「バミリ」を作ったり貼ったりするのはADさんのことが多いので、今回モチーフとして大きく取り入れました。また「下っ端として走り回るドタバタ感」を表現するために文字をパーツごとに分け、角度をつけて傾けたりしています。
さらに今回は、「春日さんが制作する朝の5分番組」として「夏のトレンドゲッチュ!」というミニ番組ロゴも作成しています。夏らしいアイスキャンデーのような文字にしてみました。
▼ミニ番組のロゴデザイン
今回担当した番組の作業で面白かった事は?
担当ディレクターから「ADっぽい春日さんのイラストを入れてほしい」というオーダーがあり楽しく作業しました。なんとなく描いた初稿では「誰?」となってしまい…似せるのに苦労しました。資料としていろいろな写真を見ましたが、大半が笑顔だったので視聴者が見慣れている春日さんの表情は笑顔かな?と考え、笑顔だけど、ちょっと無理もしている感じ…という表情で描きました。
他にも目の形や視線の方向など、細かい部分を調整しました。ちなみに一番上に3段積まれているのはお弁当です。
④「混ぜるなキケン 」
今まで見たコトない組み合わせを混ぜ合わせてみると一体どうなるのか!?「似たもの同士を」「ライバル企業同士を」「特殊な過酷環境に」混ぜ合わせてみて、MC東野さんが化学反応を確かめる実験バラエティー番組です。こちらも担当デザイナーに話を聞きました。
タイトルロゴデザインのコンセプトは?
はじめに、演出担当(ディレクター)から「マーブル模様」「キケン・びっくり感」「MC東野幸治さんのイラストをつけたい」といったオーダーを受けました。ディティールについては特に指示がなかったため、自分なりに「キケンな実験」を連想させて東野さんが薬品を混ぜている様子とバリケードテープやハザードシンボルを組み合わせて、ポップなマッドサイエンティストをコンセプトにロゴを作成しました。
初案で方向性はOKをいただきましたが、演出から「タイトルをシンプルに読みやすく!」「イラストが少し怖い!」という意見を受けタイトルをハザードマークに入れ込んでいる箇所やイラストをアメコミ風にしていた箇所を修正しました。 結果、幅広い年齢層が見ている日曜日の昼の時間帯を意識して暗い印象になりすぎず、マッドサイエンティスト感を出したデザインに完成することができたと思います。
▼ロゴデザインの初案(文字の形やイラストが完成系とはかなり異なっている)
今回担当した番組の作業で面白かった事、苦労した事は?
テロップデザインについては「ポップでバラエティー感を出したい」と指示を受けて、ワイプ・出演者ネーム・コメントフォロー・説明テロップにタイトルロゴにも入れている液体の飛び散りイラストやハザードマークを入れて、ポップで個性的なデザインを目指しました。
毎回、他番組とは異なるデザインを作りたいと思いつつも個性を優先しすぎると視認性が悪くなり、視認性を優先しすぎるとシンプルになってしまうので、そのバランスを考えた上で個性のあるデザインを作ることに苦労しています。
▼テロップのデザイン
最後に
いかがだったでしょうか?このように、今回はコンセプトが全く異なる4つの番組を4人のデザイナーが中心となってデザイン制作を行いました。番組によってそれぞれ進め方も違い、デザインが出来上がるまでにも様々な苦労がありました。
このような過程を経て、日々個性あふれるデザインが生まれています。今回のように同時に4つの特番を進めるというのは結構珍しい事でもあるので、私たちオンエアグラフィックチームにとっても非常に有意義な経験となりました。