映画「あまろっく」美術の裏側
2024年4月19日から全国で公開されている映画「あまろっく」を皆さんはご覧になられましたでしょうか。
弊社MBS企画が制作に全面的に関わっている作品なのですが、我々美術部も参加しています。
映画「あまろっく」はオールロケで撮影したのですが、美術視点で「あまろっく」撮影の裏話を少しご紹介します。映画をご覧になられた方は、この記事を読んでいただいた後にもう一度「あまろっく」を見ていただければ、さらに面白く見ていただけるかと思います。まだ映画をご覧になられていない方は、いますぐご覧ください!
近松家はどこ?お家が決まらない!
この映画の重要な場所の一つが主人公たちが暮す「近松家」です。一見どこにでもある普通の家が映画の舞台なのですが、監督のイメージや間取り、シチュエーションなどにマッチするロケ地を探してみると使えるお家がなかなか見つからない!
ギリギリまでロケで撮影にするのか、いっそスタジオにセットを建てて撮影してしまおうか…と話し合いが日々行われておりました。最終決定をするギリギリで運よく実際に撮影したあのお家が見つかり、無事近松家が決定しました。
しかし問題はここからです。使わせていただくお家を「近松家」にするべく、台本に沿って家具の配置や飾り付けなどを考えていきます。ギリギリで家が決まったため、とにかく準備までに時間がありません…
デザイナーの力の見せどころが始まります。まずは平面図で家具の配置や出演者の動きを確認。その後イメージ画で部屋の飾りなどを次々と決めて行きます。
今回はロケハンから撮影まであまり日が無かったので、事前に監督からかなり明確なイメージを聞き取りをしました。そのこともあってなんとか撮影に間に合いました…というか間に合わせました。
映画をご覧になられた方は気づいているかもしれませんが、物語は過去から現在へ時代が進むので微妙に飾りや家具が変わっていってます。特に早希が引っ越してきた後はカーテンを変えたり、ラグをひいたり、明るく華やかな早希のイメージに合わせたリビングへと変身しています。このあたりの細かな作業も美術の力の見せどころと楽しみどころです。※押入れを早希のスペースにしてリビングの雰囲気をガラッと変えています。
こだわりの小道具たち
物語は1994年から始まります。劇中に出てくる小道具たちもその時代に相応しいものを用意するのですが、もちろん現在は簡単に手に入らない物も数多くあります。特に今回小道具集めに苦労したのが、近松家や工場に置かれる阪神タイガースのグッズです。現代の阪神タイガースグッズであれば、すぐ手に入れられるのですが、過去の物となると欲しい物もなかなか手に入りません…
必死のパッチで、劇中の設定に合うものを美術チームで頑張って集めました。もちろんこのタイガースグッズも時代によって飾りが少し変わっていっています。こちらもぜひチェックしてみてください。左:近松家の和室 棚の中にも阪神タイガースのコップ 右:鉄工所の冷蔵庫 細かな阪神タイガースグッズ
その他にも細かいところでは、写真の左上の額縁飾りも美術で作っています。お母さんが優子ちゃんと一緒に作ったイメージで作成したので、手作り感満載にしています。こちらも時代が進むと飾りが傷んだり取れたりしています。
他にも劇中に出てくる様々な物を作っていますが、中には一見本物に見えるような物も、実は偽物という物も。鉄工所にある鉄骨は、撮影中に万が一倒れても演者さんやスタッフがケガをしないようにダンボールや木材で出来ています。
近松家のお墓も木製で本物の石と比べるとずっと軽くしています。これは少人数のスタッフで撮影する時だけ持ち運びが出来るようにしました。これら以外にも様々な美術こだわりの小道具が劇中に登場しています。
走るセット!おでん屋たいちゃん
劇中に出てくる、軽トラ屋台「おでん屋たいちゃん」。このおでん屋たいちゃんの基は、この映画の為にダイゲン自動車工業株式会社様にご協力いただき、製作していただきました。しかもたった一度の打合せで完璧に!
このような図面から実際にトラック屋台をつくってもらいましたが、作った物をあえて汚す加工など、普段はされないであろう作業も快く引き受けてくださりイメージ画以上の素敵なおでん屋台が出来上がりました。
他にもここには書ききれない作り物や制作過程が盛りだくさんな映画「あまろっく」ですが、映画としてはもちろん、いろいろな部分で美術が関わっていますので、美術的な面からも楽しんで見ていただけるのではないかと思います。